高齢者にとっての口腔ケアは、ムシ歯や歯周病の処置、入れ歯の調整や口臭の予防だけでなく、生活にリズムを作り、 食べることや話すことをサポートして、生活の質を向上させることを目的としています。
特に自分の口で「美味しく 食べる」ことは大きな楽しみであり、生きる意欲につながるなど心理面への影響も大きく、体力や気力が回復します。
また、最近では口腔ケアと全身疾患との関係が明らかになってきており、その予防効果が発表されています。
口腔ケアで肺炎予防
高齢者に多い誤嚥性肺炎とは
細菌に感染された唾液や食べ物を誤嚥することが 原因で発症する肺炎で、高齢者の肺炎のうちの多 くがこの誤嚥性肺炎だと言われています。
65歳以上の高齢者では、ガン・心疾患に次いで肺 炎が大きな死因の一つとなっており、たくさんの方がこの病気にかかっていることがわかります。
要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究
米山武義、吉田光由他 日歯医学会誌2001
上のグラフから、2つのことがわかります。
- 口腔ケアを実施した期間が長くなるにつれ、 肺炎発症の抑制に効果がある
- 継続的な口腔ケアにより、発症が40%減少
認知症予防にも効果的
脳の感覚野の中で口腔の知覚が占める面積は広く、脳が受ける仕事のうち40%が 口腔に関連していると言われています。
また、咀嚼運動は脳血流量を増加させ、脳機能に活力を与えるることが発表されています。
つまり、口腔ケアによる口腔機 能の向上や刺激は、脳の広い領域の活性化につながるため、認知症の低下や予防への効果が期待されています。